現在業務のデジタル化とシステム開発・運用の内製化を進める横浜銀行では、帳票システムのシステム構築・改修に要する時間とコストを削減する目的でDocurainを導入。業務部門が自ら帳票の作成と改訂を行える環境を手に入れたことで、帳票にまつわる業務の大幅な効率化とコスト削減を達成した。
株式会社横浜銀行
銀行業務特有の法定帳票の作成・改訂を
Docurainにより業務部門だけで実現
株式会社横浜銀行
神奈川県横浜市に本店を構える横浜銀行は、約4000人の行員と17兆円以上の預金残高を誇る日本最大の地方銀行。神奈川エリアを中心に数多くの支店を展開するとともに、2016年には東日本銀行とともにコンコルディア・フィナンシャルグループを設立してさらなる事業基盤の拡大を進めている。2020年には創立100周年を迎え、次なる100年の成長に向けて経営改革に取り組んでいる。
事務サービス部 事務改善グループ 赤星 裕紀 氏
ICT推進部 預金共通・自振為替グループ ビジネスリーダー 藤谷 拓史 氏
ICT推進部 預金共通・自振為替グループ 福永 圭吾 氏
導入の背景
多くの時間とコストを要する「帳票システム」を内製化できないか?
横浜銀行では、近年特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みには力を入れており、現在さまざまな業務でデジタル活用を積極的に進めている。
「行内にデジタル活用を浸透させるためには、従来のようにシステム開発を外部ベンダーにお願いするだけではなく、内部でシステム開発を行う『内製化』を進める必要があります。しかもシステム部門だけではなく、ユーザー部門が独力でシステムの構築や改修を行えることを重視しており、そのための手段を以前から模索していました」
こう語るのは、横浜銀行 ICT推進部 預金共通・自振為替グループ
ビジネスリーダーの藤谷拓史氏。こうしたユーザー部門主体の内製化の一環として現在進めているのが、「帳票システムの内製化」だ。銀行業務は大量の帳票を扱う必要があり、特にその業態上、法律で定められた「法定帳票」を大量に作成・保管しなくてはならない。これに要する業務負荷を削減し、業務のデジタル化を推進するために、これまで紙の帳票を電子化・ペーパーレス化する取り組みを進めてきた。
その甲斐あってペーパーレス化はある程度進んだものの、同行 事務サービス部 事務改善グループ 赤星裕紀氏によれば、同時にいくつかの課題も新たに持ち上がっていたという。
「法定帳票は比較的頻繁に改訂が行われるのですが、そのたびに帳票システムを開発した外部ベンダーにシステム改修を依頼する必要があり、そのために多くの時間とコストを費やしていました。そこでベンダーに依頼することなく、自分たちで帳票の改訂に素早く対応できる方法がないか、以前からアンテナを張って探していました」
そんな折、新たに帳票出力機能を備える業務システムを導入するプロジェクトが立ち上がり、帳票周りの機能をどのように実装するか検討することになった。当初はこれまで通り、外部ベンダーに帳票関連の機能を一から開発してもらう方向で話を進めていたが、ここへ来て急転直下、帳票を内製できる目途が立ったため、当初の方針を転向することになる。
導入の経緯
「Docurain」を使って業務部門主体での帳票機能の実装に挑む
帳票の内製化への方針転換を可能たらしめたのが、クラウド帳票エンジン「Docurain」との出会いだった。それまでも赤星氏を中心に、業務現場の担当者が外部ベンダーの力を借りずに帳票のフォーマット作成から修正、出力までを独力で実施できる仕組みを模索していた。実際に幾つかの帳票システム製品を試験的に導入し、その機能や使い勝手などを検証してきた。現行の代表的な製品とも比較検討してきたが、Docurainと出会ったことで一気に実用化の目途がついた。赤星氏は他の帳票システム製品と比較した優位性について次のように語る。
「Docurainは誰もが使い慣れたExcelをベースにして帳票テンプレートを作成できるので、システム開発の経験がない者でも簡単に帳票を作成できる点が極めて優れていると感じました。実際にDocurainを含む複数の帳票システム製品を試験導入して、実務で取り扱っている帳票を試しに作成してみたのですが、やはりDocurainが最もスムーズに作業を進められました」
また藤谷氏もシステム部門の立場から、Docurainを次のように高く評価する。
「システム部門としてはこれまでDXの一環として、業務部門のユーザーが直接使いこなせるITツールを積極的に導入して、システム構築・運用の内製化を進めてきました。その点Docurainのように、非IT要員がシステム部門の手を借りずに独力でデジタル活用を進めていける仕組みは、導入する価値がとても高いと考えました」
さらには利用コストの安さも、Docurain導入の大きな決め手の1つになった。Docurainは利用コストが1帳票当たりの単価で明確に示されており、かつその価格も安価に設定されているため、他の製品と比べて大幅にコストを抑えられる。さらには外部システムとAPI経由で連携する仕組みもシンプルで仕様を把握しやすいため、業務システム本体の開発者にとっても扱いやすいのではないかと判断したという。
こうして横浜銀行は、正式にDocurainの採用を決定。まずは今回新たに導入する業務システムで取り扱う法定帳票5種類を対象に、外部ベンダーの手を借りずに帳票の作成・出力の機能を業務部門主体で実装することにした。この時点でシステムのカットオーバー期日までわずか3カ月の期間しか残されていなかったものの、Docurainの開発元ベンダーであるDocurain社の担当者がサポートし、短期間で導入作業を終えることができたという。
「Docurain社の担当者の方に利用方法をハンズオン形式で丁寧に教えていただいたおかげで、わずか3カ月間という短い期間で5種類の帳票の出力機能を実装することができました。同様の機能をスクラッチ開発で実装するとなると、1帳票当たり最低でも1人月は掛かっていたところですが、Docurainを採用したことでその半額以下のコストですみました」(赤星氏)
導入効果
従来3カ月間かかっていた帳票改訂がわずか数日間で
こうして赤星氏がDocurain社の担当者やシステム部門からのサポートを得ながら、ほぼ1人で実装を進めた帳票機能は、2023年5月の業務システム本体のカットオーバーと同時に本番稼働を開始した。本番運用を始めた後もこの帳票機能は安定して稼働しており、大きなトラブルやパフォーマンス低下などの問題は一切発生していないという。
またDocurainはクラウドサービスであるため、ユーザー部門やシステム部門では特にその運用のために作業が発生することもない。唯一、Docurainのアカウントの管理や、業務現場の担当者が作成した帳票テンプレートの構成管理といった管理作業をシステム部門が主体となって行っているのみだという。
なおDocurainの本番利用を開始した後、導入当初に実装した帳票テンプレートを改訂する必要が生じたが、その際も最小限の手間で改訂作業を済ませることができたという。
「2023年5月に本番運用を開始した後、行内の人事異動に関連して帳票の内容を少し修正する必要が生じました。もし従来通り帳票機能を外部ベンダーに開発してもらっていたとしたら、ちょっとした修正を加えるだけでも見積もりをお願いして作業を発注し、開発が完了するまで、最短でも3カ月間はかかっていました。しかしDocurainの導入後は、業務現場の担当者がわずか1、2日程度作業するだけですむようになりました」(藤谷氏)
システム部門の立場からDocurainによる帳票作成をサポートした、同行 ICT推進部 預金共通・自振為替グループ 福永圭吾氏も、その使い勝手の良さを次のように評価する。
「Docurainを導入したことで、実際に帳票を利用するスタッフがどのように帳票を利用するかを見ながら、行内でスムーズに帳票の改善ができる点がとても良かったです。帳票の作成や改訂もエクセルによる直感的な操作で実現でき、簡単すぎて驚くほどでした」
これによって帳票の改訂にかかる時間とコストが大幅に削減され、頻繁に改訂が発生する法定帳票を扱う銀行の事務を効率化できる可能性が広がった。Docurain自体の使い勝手も、現場の担当者から好評を博しており、特に帳票テンプレートの登録やサンプル帳票の出力といった機能は直感的で使いやすく、現場での利用定着に大きく貢献しているという。
今後の展望
さらに多くの業務や部門でDocurainを活用していきたい
今後の展望として、赤星氏は、帳票にまつわる業務のさらなる効率化を図るために、Docurain社が提供する帳票作成支援サービスの利用も前向きに検討したいと語る。
「今回はDocurain社の支援を受けつつも、基本的には自分たちで帳票のテンプレートを一から作成しましたが、今後またDocurainを利用して大量の帳票テンプレートを作成する必要が出てきた際には、Docurain社の支援サービスを有効活用したいと考えています」
これらの将来構想を実現する上でも、Docurain社の支援には今後とも大いに期待したいと藤谷氏は語る。
「まだ私たち自身もDocurainを使い始めてから日が浅く、十分に使いこなせているとは言えない状況ですが、今後も引き続きDocurain社の強力な支援を受けながら、一緒にその可能性を引き出していければと考えています。特に銀行の業務においては、帳票は切っても切り離せない存在ですので、Docurainの利用がさらに広がることで大きな効果が得られるものと期待しています」
なお今回導入したDocurainの仕組みが行内で高く評価された結果、現在同行では他の業務や部門でもDocurainが活用できないか検討を進めている。
「今回のDocurainの導入によって、業務部門のユーザーが主体となってデジタル化を推進できる事例ができあがりましたので、今後はこれと同様の仕組みを行内の他の部門にも広く展開していきたいです。特に本部の企画のメンバーに対してDocurainの導入効果を周知させて、現場主導のDXを推進していくための呼び水にしたいと考えています」(藤谷氏)
既にDocurainの利用マニュアルの作成など、全行レベルでの活用に向けた準備を進めており、今後帳票を取り扱うさまざまな業務において導入を進めていく予定だ。特に頻繁に改訂が発生する法定帳票を数多く取り扱う業務においては、Docurainを導入することで帳票の修正が発生するたびにベンダーに開発を依頼する手間や時間、コストがほぼゼロになるため、全行レベルではかなりの業務効率化やコスト削減の効果が期待できるという。
「Docurainの導入が全行に広がることで、帳票の作成・改訂にかかるリードタイムについては8割削減、外注費・人件費などコストの観点では5割削減にもなる可能性があります。この余力創出により、横浜銀行のさらなる『攻めのIT、DX』を実現していきたいと考えています」(藤谷氏)