現在、重要な取り組みの柱の1つにペーパーレス化による業務効率化を掲げるあいおいニッセイ同和損害保険株式会社では、その取り組みの一環として火災保険の各種帳票を扱う業務にDocurainを導入してペーパーレス化を実施。従来と同等の帳票品質を保ちながら、紙の帳票を廃止したことによって大幅な業務効率化とコスト削減を実現した。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
大手損保会社が扱う各種帳票をペーパーレス化
将来的な帳票開発の内製化も視野に
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
東京都渋谷区に本社を構えるあいおいニッセイ同和損害保険は、MS&ADインシュアランスグループの一員として個人および法人顧客に対してさまざまな保険商品を提供する損害保険会社。
2010年にあいおい損害保険株式会社とニッセイ同和損害保険株式会社が合併して誕生した同社は、日本を代表する大手損害保険会社の1社として自動車保険や火災保険、傷害保険など多様な商品・サービスを幅広く展開している。
また「CSV×DX」を事業戦略に掲げ、データやデジタル技術を活用し、未知のリスクや社会・地域の課題と向き合い、保険の価値の進化を通じたより良い未来の実現を目指している。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 業務統括部 火災グループ
課長補佐 中出 慎一 氏
佐藤 恵里佳 氏
加美山 聡子 氏
山路 美和 氏
導入の背景
業務のペーパーレス化による生産性向上とコスト削減をいかに実現するか
あいおいニッセイ同和損害保険では、現在、重要な取り組みの柱の1つに「ペーパーレスの推進」を掲げている。その一環として保険証券や約款をオンラインから参照できるようにしているほか、これまで紙の帳票の提出が必要だった保険契約や契約内容変更などの手続きについても、“ADスマート”という代理店システムの刷新プロジェクトのテーマの一つとして、システムを通じてペーパーレスで行える仕組みを順次提供している。
「こうしたペーパーレスの手続きを実現するためには、これまでの紙の申込書に代わってオンラインで各種契約内容を入力・登録してホストコンピューターへ自動連携する仕組みと、契約内容を商業印刷クラスの精度をもつPDFとして自動出力する仕組みが不可欠でした」
こう語るのは、同社 業務統括部 火災グループで課長補佐を務める中出慎一氏。同グループでは同社が提供する火災保険に関する事務システムを管理しており、全社でペーパーレスの方針が打ち出されて以降は既存の紙帳票に頼った業務をいかにスムーズにペーパーレス環境に移行するか、さまざまな角度から検討してきたという。
また同グループには、保険契約や契約内容更新の実務を担う保険代理店の現場から、保険申込書をはじめとする各種帳票の内容や構成を改善してほしいとの依頼がたびたび寄せられていた。このような依頼を受けた火災グループでは、従来は紙帳票の制作を依頼していた印刷会社に対して都度修正依頼をかけていたが、同グループでこの業務を担当していた加美山聡子氏によれば、修正作業が完了するまでには少なからぬ時間を要していたという。
「修正依頼を出すたびに見積を取らなければならず、さらには修正中に発生する校正・修正の回数まで調整する必要があり、相当な時間・手間・コストを要していました。また校正・修正の回数が増えるとその分だけ更に時間とコストがかさむことになり、ほんの軽微な修正だけで数日間を要することも珍しくありませんでした」
導入の経緯
帳票開発を効率化する「Docurain」を使ったペーパーレス化の仕組み
こうした課題を解決できるソリューションを探していたところ、Docurain社から紹介を受けたのがクラウド帳票エンジン「Docurain」だった。もともとDocurain社はあいおいニッセイ同和損害保険の別プロジェクトにおいて業務システム構築を支援しており、その実績からペーパーレスの課題についても相談を持ち掛けたところ、Docurainを使ったソリューションの提案を受けた。
中出氏はDocurainの提案を受けた際の印象を、次のように振り返る。
「一般的なウォーターフォール型のシステム開発プロジェクトでは、要件定義でいったん仕様が確定した後の仕様変更はかなり難しいのですが、Docurain社はアジャイル開発のプロセスを採用しており、開発を進めながら弊社の要望を都度反映していただけるとのことだったので、柔軟なシステム開発が可能なのではないかと考えました」
またDocurainはExcelをベースにした直感的な操作で高度な自動組版システムを構築でき、システム開発スキルがない一般ユーザーでも簡単に自動組版が実現できるようになっている。この特徴を最大限に生かすことで、将来的には自社内で帳票の作成や更新を内製できるようになるのではないかとも考えたという。
「帳票の作成や更新については、現在はDocurain社に作業を依頼していますが、将来的には内製することで作業のスピードアップやコスト削減を図っていきたいと考えています。これを実現する上でも、Docurainは弊社のニーズに極めて適していました」(中出氏)
さらにはDocurainを用いたPDF自動組版の仕組みだけでなく、帳票に印字される情報を代理店の担当者がオンライン入力するための帳票作成システムについてもDocurain社が開発を担当することになった。このシステムの画面設計に携わったあいおいニッセイ同和損害保険
業務統括部 火災グループ 山路美和氏によれば、このシステムについても当初から更新作業の内製化を前提としていたという。
「代理店様が利用する入力システムについては、画面仕様を私の方で作成し、これを基にDocurain社が提供するローコードプラットフォーム技術“MOD99”を使って構築してもらいました。その上で、いったんシステムが完成した後の画面の修正に関しても、MOD99を使って私の方で直接実施できるようにしていただきました。その結果現在では、
代理店様から画面周りの改善依頼を受けた際のシステム修正対応がほぼ完全に内製化できています」(山路氏)
導入効果
これまで数日かかっていた帳票修正作業がわずか30分で可能に
これら一連の仕組みのシステム開発作業は2023年1月からスタートし、当初計画していた通りアジャイル開発の手法に則りながら、あいおいニッセイ同和損害保険側の要望を適宜柔軟に取り入れながら進められた。その結果、2023年10月に予定通りシステムのカットオーバーを迎えることができた。
同社 業務統括部 火災グループ
佐藤恵里佳氏によれば、Docurainを中核に据えたこの新たな代理店システムが業務現場に導入されたことで、これまで大量に処理していた紙の帳票の削除へ繋がったという。
「基幹システムと自動連携できるようになったことで紙の帳票を出力する必要がほぼなくなり、ペーパーレス化が期待通り進展しました。にもかかわらず、Docurain社に作っていただいたPDF帳票のクオリティは、これまで印刷会社に制作を依頼していたものとまったく変わらず、高い品質を維持できています」
また代理店から帳票の修正依頼が来た際の対応も、大幅にスピードアップできた。これまではわずか数カ所の軽微な修正にも数日間を要していたところが、Docurain社に修正を依頼すると、早ければわずか30分程度で対応してくれるという。これによって代理店からのニーズに柔軟かつ迅速に応えられるようになったとともに、修正コストの削減も同時に実現できた。
代理店から「入力システムの画面仕様を修正してほしい」との依頼が届くこともあるが、これもDocurain社のローコードツールを用いることにより自社内で迅速に対応できるため、代理店に対するサービス品質も大幅に向上したという。
「Excelのような使い勝手で画面を簡単に修正できるので、システム開発経験のない担当者でも違和感なくすぐローコードツールを使いこなせるようになりました。また入力システムのUIでは、ユーザーが入力した情報が正しいかどうかをチェックする処理を実装しているのですが、これも本来ならプログラミングが必要な複雑なバリデーション処理をツール上で簡単に実装できるので、大変助かっています」(山路氏)
なお同社では現在、システムの保守作業もDocurain社に依頼しているが、海外ベンダー製のツールとは異なり実際に製品を開発した国内ベンダーが直接サポートにあたることで、迅速かつ柔軟な対応が可能になっているという。
「サポートが必要なときには、こちらからメールで連絡するとすぐに対応してもらえますし、問い合わせた内容以上のことを提案いただけるので、とても心強いですね」(中出氏)
今後の展望
Docurainを他の保険商品の帳票にも適用して導入効果を高めていく
現在同社では火災保険に関する各種帳票のうち、約20種類についてDocurainによりペーパーレス化したが、今後はその範囲をさらに増やしていく予定だと中出氏は語る。
「今後新たに作成する帳票については、基本的にはすべてDocurainの仕組みの上に載せていきたいと考えています。今後保険商品の改定があった際には帳票も都度新たに作成することになりますから、そうしたタイミングを見計らって移行を進めていくことで、ゆくゆくはすべての帳票をDocurainの仕組みの上で運用していく予定です」
また現在では火災保険の帳票のみが対象となっているが、今後はこれを他の保険商品にも横展開していき、自動車保険や傷害保険などに関連する帳票も今回構築した仕組みに載せていきたいと同氏は抱負を述べる。こうしてDocurainによるペーパーレス化の仕組みをより広範な帳票に適用していくことで、業務効率化やコスト削減の効果をさらに広く波及させるとともに、顧客サービスの品質向上や、紙資源の節約による環境負荷低減にもつなげていきたいとしている。
さらには、現時点ではDocurain社に依頼している帳票の新規作成や更新といった作業も、Docurainの「システム開発スキルがなくても容易に帳票を開発できる」という利点を最大限生かすことで、将来的には自社内で行うことを目指すという。これによって、代理店から寄せられる帳票の更新依頼に、よりスピーディーに対応できるようになり、ひいては契約者に対するサービス品質の向上にもつながるのではないかと期待しているという。
こうした将来構想を実現する上でも、今後ともDocurain社の支援には大いに期待していると中出氏は述べる。
「弊社側の体制も人事異動等で変わる可能性もあるため、Docurain社にはぜひ弊社の業務や戦略を深く理解していただいた上で、たとえ弊社側の担当者が替わったとしても一貫した方針に基づいて強力に伴走支援を続けていただければと思います。またそれだけでなく、今後は弊社の業務や事業の成長につながるような価値の高い提案も期待しています」